生命保険は、私たちの人生において重要な役割を果たす金融商品です。不測の事態に備え、家族の生活を守るために多くの人々が加入しています。しかし、すべての生命保険商品が消費者にとって最適というわけではありません。
今回、日本生命で部長まで務めた経験を持つファイナンシャルプランナー(FP)の方から、大手生命保険会社、特に「漢字系」と呼ばれる保険会社の商品について興味深い指摘がありました。
この元部長は、なぜ大手の保険会社を退職し、独立したFPとして活動することを選んだのでしょうか。その理由と、消費者が知っておくべき重要な情報について深く掘り下げていきます。
生命保険会社の分類
まず、生命保険会社の分類について理解を深めましょう。一般的に、日本の生命保険会社は以下の3つのカテゴリーに分類されます:
1. 漢字系生命保険会社
漢字系生命保険会社は、日本の保険業界で長い歴史を持つ大手企業群です。具体的には以下のような会社が含まれます:
- 日本生命
- 第一生命
- 明治安田生命
- 住友生命
- 三井生命
- 太陽生命
- 富国生命
- 大同生命
- 朝日生命
これらの会社は、日本の生命保険市場の約46.9%のシェアを占めており、多くの日本人にとってなじみ深い存在です。多くの場合、親世代から継続して利用している家庭も少なくありません。
2. カタカナ系生命保険会社
カタカナ系生命保険会社は、主に外資系の企業で、バブル経済以降に日本市場に参入してきた比較的新しい保険会社です。例えば:
- アフラック
- メットライフ
- アクサ
- プルデンシャル
これらの会社は、生命保険や医療保険の選択肢が多く、月々の保険料も比較的安価な商品を提供しているため、近年人気が高まっています。専門家やファイナンシャルプランナーからも高い評価を受けることが多い保険商品を展開しています。
3. ひらがな系生命保険会社
ひらがな系生命保険会社は、主に損害保険会社を母体とする生命保険会社です。例えば:
- 東京海上日動あんしん生命
- 損保ジャパン日本興亜ひまわり生命
- 三井住友海上あいおい生命
これらの会社は、損害保険会社の安定した財務基盤を活かし、高いソルベンシーマージン比率(保険金支払い能力を示す指標)を誇ることが特徴です。特に東京海上日動あんしん生命は、豊富な資本を活かした独自の給付型保険商品を提供しています。
元日本生命部長が語る:漢字系保険会社の商品がおすすめできない理由

では、なぜ元日本生命の部長は、自身が長年勤めた会社を含む漢字系の保険会社の商品をおすすめできないと考えたのでしょうか。主に以下の2つの理由が挙げられています。
1. 定期的な保険料の上昇
漢字系の保険会社が提供する商品、特に定期特約付終身保険では、一定期間ごとに保険料が見直されることがあります。これにより、以下のような問題が発生する可能性があります:
保険料の急激な上昇
例えば、30代で加入した際に月々15,000円だった保険料が、40代で30,000円、50代で50,000円というように、年齢とともに大幅に上昇することがあります。この上昇は、多くの加入者にとって予想外の負担となる可能性があります。
家計への影響
50代は、子どもの教育費や住宅ローンの返済など、家計の負担が大きくなる時期と重なることが多いです。そのような時期に保険料が急激に上昇すると、家計を圧迫し、生活に大きな影響を与える可能性があります。
解約のリスク
保険料の上昇に耐えられなくなった場合、泣く泣く保険を解約せざるを得ないケースも少なくありません。しかし、50代以降は健康上のリスクが高まる時期でもあり、本来なら保険が最も必要な時期に保障がなくなってしまう危険性があります。
2. 保険の「転換」に関する問題
保険の見直しの際に行われる「転換」について、以下のような問題点が指摘されています:
転換の仕組み
転換とは、既存の保険契約を解約せずに、その解約返戻金を活用して新しい保険に加入する方法です。一見、有利に思えるこの方法ですが、実際には様々な問題を含んでいる可能性があります。
見かけ上の有利さ
転換を勧める際、保険会社は「保障内容が充実し、保険料が変わらない」などと説明することがあります。しかし、この説明は必ずしも加入者にとって有利であることを意味しません。
実質的な不利益
転換によって、以下のような不利益が生じる可能性があります:
- 新しい契約では、健康状態によっては保険料が上がったり、特約が付けられなくなったりすることがある
- 解約返戻金が少ない時期に転換すると、実質的な保障額が大幅に減少する可能性がある
- 複数回の転換を重ねることで、長期間多額の保険料を支払っても、最終的な保障額が当初の契約よりも大幅に減少するケースがある
具体的な事例
元日本生命部長は、以下のような事例を挙げています:
「20数年間に『転換』を3~4回も繰り返させられ、その間に合計で1800万円以上も保険料を支払ったのに、保険料を支払い終わった時点で残った保障はたったの100万円になってしまった人も大勢います。」
このような事例は、転換が必ずしも加入者にとって有利ではないことを示しています。
なぜ元部長は大手保険会社を退職したのか
元日本生命部長がキャリアの絶頂期に会社を退職し、独立したFPとして活動を始めた理由は、以上のような問題点にあります。彼の決断の背景には、以下のような考えがあったと推測されます:
1. 顧客本位の サービス提供への願望
大手保険会社では、会社の方針や販売ノルマなどにより、必ずしも顧客にとって最適な商品を提供できない場合があります。独立することで、顧客の利益を最優先に考えたアドバイスが可能になります。
2. 倫理的なジレンマの解消
自社の商品が顧客にとって最善ではないと認識しながら販売を続けることは、倫理的なジレンマを生じさせます。独立することで、このジレンマから解放され、良心に従ったアドバイスが可能になります。
3. 多様な商品の提案
特定の会社に属さないことで、市場に存在する多様な保険商品の中から、顧客のニーズに最も適した商品を自由に選択し、提案することができます。
4. 業界全体の改善への貢献
独立したFPとして活動することで、消費者に正確な情報を提供し、保険業界全体の透明性と信頼性の向上に貢献できると考えたのかもしれません。
消費者が注意すべきポイント

これらの情報を踏まえ、消費者は生命保険に加入する際、以下のポイントに注意する必要があります:
1. 将来的な保険料の変動を考慮する
保険に加入する際は、現在の保険料だけでなく、将来的な保険料の変動可能性についても十分に理解しておくことが重要です。特に、定期的に保険料が見直される商品の場合、将来の家計への影響を慎重に検討する必要があります。
2. 「転換」を慎重に検討する
保険の見直しや転換を勧められた際は、その提案が本当に自分にとって有利なものかどうか、慎重に検討する必要があります。必要に応じて、独立系のFPなど、中立的な立場の専門家にセカンドオピニオンを求めることも有効です。
3. 自身のライフプランに合わせた保険選びを心がける
生命保険は、個人のライフステージや家族構成、財政状況によって最適な内容が変わります。自身のライフプランをしっかりと考え、それに合わせた保険を選ぶことが重要です。
4. 複数の保険会社の商品を比較する
特定の保険会社や販売員に頼るだけでなく、複数の保険会社の商品を比較検討することが大切です。インターネットの比較サイトや、複数の保険会社の商品を取り扱う保険ショップの利用も検討しましょう。
5. 保険の仕組みを理解する
生命保険の基本的な仕組みや、различな保険用語の意味を理解しておくことで、セールストークに惑わされることなく、冷静な判断ができるようになります。保険会社のパンフレットや公的機関が提供する情報なども活用しましょう。
6. 定期的な見直しを行う
生命保険は長期の契約になりがちですが、ライフステージの変化や新しい保険商品の登場に合わせて、定期的に見直すことが重要です。ただし、安易な解約や転換は避け、慎重に検討しましょう。
7. 特約の内容をよく確認する
本体の保険に付帯する特約の内容をよく確認しましょう。特約によっては保険料が大きく変わったり、将来的に保険料が上昇する可能性があったりします。必要な特約のみを選択することで、保険料を抑えることもできます。
8. 解約返戻金の推移を確認する
解約返戻金の推移を確認し、長期的な資産形成の観点から保険を評価することも大切です。解約返戻金が低い商品の場合、途中で解約すると大きな損失を被る可能性があります。
9. 保険会社の財務健全性を考慮する
保険会社のソルベンシーマージン比率など、財務健全性を示す指標を確認することも重要です。長期の契約となる生命保険では、加入する保険会社の将来的な支払い能力も考慮に入れる必要があります。
10. クーリングオフ制度を理解する
保険契約には「クーリングオフ」と呼ばれる契約撤回の制度があります。契約後、一定期間内であれば理由を問わず契約を解除できるこの制度を理解し、必要に応じて利用することも考えましょう。
まとめ
元日本生命部長の指摘は、大手生命保険会社、特に漢字系の保険会社の商品に潜在的な問題があることを示唆しています。しかし、これは必ずしもすべての大手保険会社の商品が悪いということではありません。重要なのは、消費者一人一人が自身のニーズと状況を十分に理解し、適切な情報に基づいて慎重に保険を選択することです。
生命保険は、私たちの人生に長期にわたって影響を与える重要な金融商品です。短期的な視点だけでなく、長期的な影響を考慮し、必要に応じて専門家のアドバイスを求めながら、自身に最適な保険を選ぶことが大切です。
また、保険業界全体としても、より透明性の高い商品説明や、顧客本位の商品開発が求められているといえるでしょう。消費者の意識向上と業界の改善努力が相まって、より良い保険環境が築かれることが期待されます。
最後に、生命保険の選択は個人の状況によって大きく異なります。この記事の情報を参考にしつつも、最終的には自身の状況に合わせた判断を行うことが重要です。必要に応じて、信頼できる専門家に相談し、十分な情報と理解に基づいて意思決定を行いましょう。


